はじめまして。スペインのバレンシアでオレンジのオーガニック栽培に取り組んでいるベルトメウ農園から日本の皆様への「バレンシア便り」です。これから農園のことやスペインやバレンシアの事などを少しずつ紹介してゆきたいと思います。
INDEX
- Vol.1「私たちが作っています」
- Vol.2「オレンジ農園の夏」
- Vol.3「秋祭りの巨大パエリア」
- Vol.4「オレンジの収穫」
- Vol.5「スペインのクリスマス事情」
- Vol.6「フランスの青果市場へ」
- Vol.7「火祭り(Las Fallas)」
- Vol.8「オレンジの花が咲きました」
- Vol.9「突然ですが“サラゴサ”グルメの旅」
2009年7月:バレンシア便り Vol.9「突然ですが“サラゴサ”グルメの旅」

典型的な地中海式気候のバレンシアはスペインの他の地方が大雨でもまぶしいばかりの晴天続きです。先日3か月ぶりに半日雨が降り、猛署も一時的におさまりましたが、それでも日中は40度近くになります。
私は北国出身なので何年たってもこの暑さに慣れることができません。「もう体力も気力も限界」ということで、休養を兼ねてサラゴサ(Zaragoza)というスペイン北東部の都市へ行ってきました。

サラゴサはバルセロナとマドリッドのほぼ中間に位置し、エブロ川の両岸に広がるスペインの主要都市の一つで、アラゴン自治州の州都でもあります。去年水をテーマにしたExpoが開催されたので、聞覚えのある方もいるかもしれないですね。

街の中心には壮大なピラール聖母教会があります。この教会は、12使徒の1人で、スペインにキリスト教をもたらしたと言われているヤコブがこの地を訪れた際、聖母が現れて一本の柱(ピラール)を手渡し、ここに教会をたてるように言われたという伝承から、その時に手渡された柱を収めるために建設されたそうです。天井のフレスコ画の幾つかは若きゴヤの作品として知られています。また古代ローマ時代に植民市として建設され栄えたサラゴサには、ローマ時代の浴場や劇場などの遺跡もあちらこちらにあります。


訪れた7月の初めは、サラゴサも暑くてあまり外には出たくないような気温で(38度)したが、せっかくなので即席観光もしてみました。今回、サラゴサに来たのは、100%休養と言うわけではなく、やはり仕事の打ち合わせも兼ねていたのですが、丁度、レストランを経営している知り合いがいまして、「美味しいものを食べに来てください」という有難いお誘いをいただき、家族でランチを食べに伺ったのです。
このレストラン「Las Lanzas」(スペイン語で槍:ベラスケスの傑作、ブレダの開城(槍)からのネーミング)は地元の郷土料理をベースにした高級創作料理を出してくれます。メニューも豊富で毎日来ても違うお料理が食べられるということです。
グルメとは程遠い毎日を送っている私たちを出迎えてくれたのは「ホセリートの生ハム」でした。ハモン・イベリコ・ベジョータ(イベリコ豚をドングリで飼育したもの)は知っていましたが、ホセリートとは?
それは最も権威のある生ハムの名前(ブランド名Joselito http://www.joselito.com/jpn/elalma_espiritu.htmが呼称となっている)だったのですねー。
これは完全注文販売というか、生まれる前の子ブタから予約して完全前金制で買い付けるのだそうで、そこここで買えるものではないのだそうです。このレストランでは長年の実績から毎年100本の買付けの枠をもらっています。支払いをしてから実際にハムが手元に届くまでは3年かかるということです。
この幻のホセリートをトマトパンに載せて頂きましたが、なるほど絶品です。あまりにも恐れ多くて写真を撮り忘れましたが、赤味と脂身が霜降り状態で混ざり合っていて、ピカピカ光沢があり、中のほうまでしっかりと熟成が行き届いているのが分かります。
もう一つの前菜は赤エビのソテーでこれも美味しい!もうこの辺りで腹八分目の感じですがここからがメインデッシュです。
ホセリートを芸術的にカットしてくれたり、お料理の説明をしてくれる給仕長さんはここで、本日のお勧めの説明をしてくれたのですが、これが今までどこでも受けたことのないような魅力的な説明でした。笑顔満面でいかにも美味しそうに楽しそうに料理の内容や食材を披露してゆきます。聞いているだけで幸せになります。どれも美味しそうで「今日食べられないお料理もいつかは食べにこなくては」と思ってしまうのです。説明を聞いただけで得した気分になりました。こんな給仕長さん、珍しいですよね!
そして、彼の饒舌な説得でデザートまで完食しました。


ランチが目一杯だったため、夜になってもお腹がすきません。
でも、そこは食事を大切にするスペイン。半ば強制的な誘いを受けこのレストランのオーナーのお友達のレストラン「El Chalet」(スペイン語で別荘の意)http://www.elchaletrestaurante.es/ にGO!
全員「軽いもの」ということで「前菜盛り合わせ3点セット」をお願いしたのですが、これがまた絶品でした。牛肉のたたき風・帆立て貝のグリル・マグロの一口ステーキという3点でしたが、味付けがどことなく和風で本当に美味しかったです。
日本の皇太子さまが去年Expoでサラゴサにいらしたときにこのレストランを利用されたということで、そのときの皇太子さまのサインを見せていただきました。
その後は涼しいホテルの部屋でゆっくり休んで、本当に素晴らしい週末でした。ミシュランの星はなくてもいいレストランは沢山あるんですね。
今年はまだ海に一度も行っていないので次回はビーチの様子などお伝えできたらと思います。
それではまた「Hasta luego !」
2009年6月:バレンシア便り Vol.8「オレンジの花が咲きました」

今年はオレンジの花の開花がやや遅く、4月に入ってから咲き始めました。4月の中旬から下旬にかけては夜になると村中がオレンジの花の甘い香りで一杯になります。
そして、5月に入り暑い日々が続いていましたが、第2週の末はまた一気に気温が下がりました。5月7日の木曜日にはいきなり日中の気温が35度になり、「週末は海!」と楽しみにしていた人達はガッカリしていました。
しかし、我がオレンジ畑は連休も海も関係ありません。毎日暑い中、作業が黙々と行われています。
今年は今まで定期的に雨が降ってくれたので、名物の「水出し作業」も出番がなく、その分楽で助かっています。その代り、雑草がよく育ってくれていて、草刈作業がいつもより大変です。それと並行して剪定作業もしています。また、合間をぬってたい肥を撒いたりもします。

剪定作業はボリビア人のルイス君が担当です。ルイス君のお父さんは育林業をしていたので、のこぎりを使うのはお手の物です。しかも今年は超軽量の日本のメーカーの電動のこぎりを購入したので、作業がはかどって助かります。
草刈りはXavierの担当です。去年はブルガリア出身の人が頑張ってくれていたのですが、なかなかきつい仕事なので人員の確保が難しいのです。
ここでも、日本のメーカーが登場します。日本の機械は小回りが利くので、重宝されているんですね!
Xavierの「こんなに軽いからあなたでも簡単にできますよー」という言葉につられて、私も電動草刈り機を体験しました。でも、重いし、機械の振動で振り回されるしで、ほんの4〜5m進んだところでギブアップしました。力自慢の私でしたが、これ以上続けると体がバラバラになりそうでした。この作業を一日8時間も続けるなんて人間業ではないと思われるほどです。

力仕事は無理だったので、後ろ向きの仕事をボチボチ手伝うことにしました。今シーズンはオレンジ不況で収穫されなかったものが沢山あります。そのまま実が付いている状態では木に負担がかかるので、なるべく早く取り除かなければなりません。でも、なかなかそこまで手が回らないのと、このような作業に人件費をかけてもいられない事情もあり、まだ沢山の実がついたままになっている木が沢山あります。

もう収穫時期から4〜5か月も経過しているので、自然に落ちてもいるのですが、木に力があるので、中には400個もの実をつけているものもありました。収穫できなくて、このようにもぎ取って捨てるのは本当に残念です。来シーズンはこんな作業をしなくて済むと良いのですが。。。。
お天気も良くなってきて、日も長くなり夕方からは仕事を終えた人たちがオープンカフェでおしゃべりしていて賑やかです。春祭りシーズンにも突入し、村に活気が満ちてきています。
スペインも不況に見舞われていますが、スペイン人は口ではいろいろ言っても「深刻」にならないところがイイところなのかもしれませんね。
それではまた「Hasta luego !」
2009年4月:バレンシア便り Vol.7「火祭り(Las Fallas)」

春を告げる火祭りはバレンシアにとってはとても重要なお祭りです。
火祭りのフィナーレとなる3月19日は聖人ホセの祝日です。ホセ(ヨセフ)は聖母マリアの夫で、キリストの父にあたる人ですが、彼が大工であったことから、この祝日に古い家具を広場に出しで燃やしたことがバレンシアの火祭りの始まりだそうです。今は、大きな張り子の人形を作って、それを最終日に燃やします。

火祭りはバレンシア州の津々浦々で開催され、人形の大小と数の違いこそあれ、お祭りを祝う気持ちはどこも一緒です。でもやはりバレンシア市内の火祭り人形は見ごたえがあります。バレンシア市では各町内・区画ごとに「火祭り実行会」があり、その会ごとに人形を作ります。この人形は専門のデザイナーがいて、専用の制作工場もあります。火祭りはバレンシアの一大産業でもあるのです。

祭りは人形とそれを燃やすだけではなく、沢山の行事があります。とくに最終日の3月19日の一週間前から、お祭りの主催者たちは寝る時間もないほど忙しい様子です。人形は街のメインストリートや広場に設置されるので、火祭り期間中は交通が大混乱します。設置期間は5日間ほどですが、大都市の交通網を大胆にストップしてしまうのですから、スペイン人は流石です。

バレンシア市内では3月17日・18日の2日間にかけて、聖母マリアへ献花が行われます。広場に設置された大きな聖母マリアの体を覆うマントを花で埋め尽くしてゆきます。綺麗な民族衣装に身を包んだFallera(ファリェラ)達が感動のあまりに涙ぐみながら聖母マリアに花束を捧げます。その花束を次々と木の枠に組み込んでマントを仕上げて行きます。この献花式はお祭りの中でも最も華やかで感動的な行事です。


火祭りに欠かせないのは爆竹です。バレンシアの市庁舎前では何千発もの爆竹が景気よく打ち鳴らされます。町内・区画ごとでも、派手に鳴らされます。それでも飽き足らず、子供たちは街を歩きながら爆竹を鳴らします。小さなものからXXLと呼ばれる轟音を発するものまで、通りのあちらこちらで炸裂させています。ぼんやり歩いていると飛び上がるほと驚かされます。
最終日の人形を燃やすのは感動するという話ですが、これはお祭りの実行会の人だから感動するのであって、ほかの地元の人はあまり興味を持っていません。私も今まで2度ほど見学しましたが、遅くに始まるし、煙もすごくて今年もクレマ(バレンシア語で燃やすの意味)はパスしました。

私の火祭りでの一番のお勧めは、やはり聖母マリアへの献花式でしょうか。民族衣装がすばらしいです。それから、TVで見ていると、毎年のパレードには、生後2日とかの誕生したばかりの赤ちゃんがベビーカーで参加しています。モチロン、お母さんも!火祭りに参加したくて、お祭り前にお産を終えて駆けつけるんですね。全くすごい気力と体力です。ちなみに、火祭り実行会の会長を長年務めていた友人のお父さんは、孫が生まれる前から実行会の会員に登録していたそうです。まだ孫の性別が分からないので、男女2人分の登録をして会費を納めていたそうです!生まれる前や生まれてすぐにお祭りに参加しているのですから、火祭りにかける熱い思いがDNAのように受け継がれていくのでしょう。
今年のお祭りは終わりましたが、もう来年の火祭りに向けて火祭り人形のデザイン作成などが動き出しています。お祭りの後の感傷に浸るのはバレンシア流ではないようですが、これもまた火祭りパワーの源なのかもしれません。
日中の気温が25度を超える日も多くなってきました。春を通り過ぎて初夏の陽気です。4月はキリスト教の一大行事「復活祭」が控えていますし、わが町はお祭りシーズンに突入します。それではまた「Hasta luego !」
2009年2月:バレンシア便り Vol.6「フランスの青果市場へ」

一月下旬からスペイン全土で観測記録が次々と更新されるほどの強風が吹きまくりました。各地で被害をもたらした強風もやっとここ1週間ほどはおさまっています。
風がなくお天気の日には気温も20度まで上がりますが、翌日には冷たい風が吹き、最高気温が11度ほどにしかならない不安定な気候で、いま一つ春になり切れない感じのバレンシアです。それでも、バレンシア語で「アグレット」と呼ぶ黄色い花が春を告げています。
「アグレット」はクローバーの一種ですが、我がオレンジ畑の下草として、土を乾燥から守る大事な役割を果たしてくれます。写真を撮影した日は生憎のくもり空でしたが、お天気が良い日には太陽の光が反射して黄い花がまぶしすぎて目がちかちかするほどです。

今シーズンの幕開けは雨続きでオレンジ市場は惨憺たるものでしたので、サバイバルのために、オレンジの売り方を変えてみました。
今までは農協とか大きなオレンジの生産・卸売り業者にオレンジを納めていましたが、クリスマス前から、収穫したオレンジを箱詰めしてフランスのPerpignan(ペルピニャン)の青果市場に出荷しています。このペルピニャンはヨーロッパ最大の青果物卸売業者の集積場として有名で、ここに集まった野菜果物はフランス国内だけでなく、ヨーロッパ全土へ送られます。

この様なことになるとは想像すらしていなかったので、はじめてのことばかりで試行錯誤の毎日です。
オーガニック農産物は、倉庫や箱詰めの工場などを持つ場合、すべてオーガニック基準を満たすための検査を受けなければならないのですが、そのような適当な施設をすぐに見つけることも、すぐに認定を受けることも不可能です。唯一認められた方法は、オレンジ畑で箱詰めなどすべての作業を行うこと。

当然、オレンジの大きさを振り分ける機械などもなく、すべて手作業で小さすぎるものや傷んだものは取り除きますが、あとは大小混合で、9kgまたは8kgずつ箱詰めします。
トラックの荷台もフル活用します。注文によって18パレットから24パレット準備ができると、大型トレーラーに詰め込むために、幹線道路沿いまで、パレットを移動します。
農協等の倉庫ですと、トラックやトレーラーにそのままフォークリフトが乗りこめるようになっていますが、そんな贅沢な設備はオレンジ畑にはありません。でも、ブルガリアチームの活躍で、なんとか積み込み作業もスムーズにできるようになりました。

最初はオレンジの大きさはまちまちでOKとの事で、その言葉に従って作業を行っていました。ところが、摘み取り・箱詰め作業が一段落した時点で、車で国境を越え、農園から約600km離れたペルピニャンのお客様を訪問してみると。お叱りの言葉を受けてしまいました。
「オレンジは新鮮で美味しく品質は抜群だが、大きさの仕分けが全然なっていない。これでは売れません!」という次第です。お客様の要望を直接聞くことができたので結果としては非常に良かったのですが、仲介業者からは大きさが不揃いなのは気にしなくても良いと言われていたので、本当にビックリしました!?(スペインでは、いつものこと?)

現在は、種類によって3種類の大きさに選別しています。一つ一つ手作業ですが、何とか評判を持ち直し、来年への希望をつなぎ止めることができました。
今シーズンはこのまま手作業で続けるほかはありませんが、簡易な選別機械を探したり、作業場を探してオーガニック認証委員会に登録しようと来シーズンに向けて準備中です。
さて、バレンシア最大のイベント、「火祭り(Las Fallas)」が一ヶ月後に迫ってきました。火祭り人形の制作もそろそろ仕上げの段階に入る模様です。次回は華やかな火祭りの様子をお伝えしたいと思います。
それではまた「Hasta luego !」
2009年1月:バレンシア便り Vol.5「スペインのクリスマス事情」

スペインに来てから、国によってクリスマスのお祝いの仕方が違うことを知りました。日本ではクリスマス・イブの夜にサンタクロースがプレゼントを配りますよね?
オランダやドイツでは12月6日のサン・ニコライの祝日にプレゼント交換をするそうです。このサン・ニコライはサンタクロースの起源だという説もあるそうですが、オランダではトナカイの引く橇(そり)に乗ってくるのではなくて、スペインから汽船に乗って、オランダに着いてからは白馬に乗って移動するのだそうです!?

スペインのクリスマス事情も日本とは違います。まず、クリスマスの飾りは、キリストが誕生した時のベツレヘムの様子をミニチュア人形などで再現した「べレン」と呼ばれるモノです。この「べレン」は、コンクールもあるそうで、キリストが生まれた馬小屋だけでなく、その周辺の村全体を再現します。大きいものではタタミ3畳にもなるそうですが、年々クリスマスツリーに主役の座を奪われてきています。でも、まだまだ大きな町の広場には等身大の人形でベレンが飾られていたりします。(写真を紛失しました。ごめんなさい)


また、スペインではプレゼント交換は1月6日のレイエス・マゴス(東方の三博士)の祝日です。これは、キリストの誕生を祝って東方の三博士(三賢人)がお祝いを持って賛礼にきたことにちなみます。1月5日の夜はスペインの津々浦々でレイエス(東方の三博士)のパレードが行われます。今年はインフルエンザに罹り体調不良のためわが町の小さなパレードにしか行けませんでした。人口2000人程度の小さな町でもレイエスは立派な馬車に乗って登場します。バレンシア市内では船で港から上陸したり、ヘリコプターで登場したりするそうです。もちろん、その後は馬やらくだに乗って市内を練り歩き、パレード中は飴や小さなおもちゃ等を振舞ってくれます。

小さな町の良いところは、パレードの後、教会でレイエスが直々にプレゼントを渡してくれるところです。プレゼントは名前を付けて予め教会に預けておくのですが、子供も大人もいつ名前を呼ばれるかドキドキ・ワクワクです。レイエスも昨今サンタクロースに押されぎみなのですが、まだまだ根強い人気です。

ということで、スペインのクリスマス・シーズンは12月中旬から1月6日までなので、その間に年が変わります。新年は大みそかのカウントダウンに合わせて12粒のブドウを食べてシャンペンを飲んでお祝いするだけの簡単なもので、祝日も1月1日のみです。
各月の幸運を祈るということで12粒のブドウを食べるのだそうですが、この習慣は100年ほど前から始まったとのことです。3年ほど前からわが町でも広場でカウントダウンが行われているのですが、シャンパンをかけられるのもちょっと?ということで、ブドウは家で頂いています。
今シーズンはインフルエンザでダウンしていたのであまりいい写真が撮れなくて申し訳ありませんでしたが、スペインのクリスマスのご紹介でした。
それではまた「Hasta luego !」
2008年12月:バレンシア便り Vol.4「オレンジの収穫」
更新が年末になってしまいましたが、今回はオレンジの収穫の様子をご紹介したいと思います。
初秋の長雨からやっと天候が回復して、今は収穫の真っ最中です。ただ今年のオレンジ戦線は芳しくありません。バレンシアでオレンジ産業に長年関わってきた人がかつてない程の不況だと嘆いています。オレンジの収穫を当てにしてバレンシアに集まってきた移民の人たちも仕事がなくて途方に暮れています。ベルトメウ家のオレンジはオーガニック栽培ですので、何とか需要があり、最近は収穫もコンスタントにしています。
そんな訳で今年は収穫部隊も縮小ですが、ブルガリアチームとルーマニアチームが頑張ってくれています。収穫は約30人で一つのチームになります。

収穫は日が昇る朝8時から始まりますが、オレンジが朝露で濡れている間は収穫ができません。せっかく8時から待機していても収穫開始は12時過ぎと言う事があります。
一方、朝露を見越して集合を10時にした日に限って風があり、朝の8時にはオレンジがすっかり乾いていて収穫できるのに人がいないということもあります。やはり自然は人智を超えているということなのでしょう。

収穫はハサミを使って一つ一つ丁寧に行います。木で熟したものしか収穫しないのですが、夢中になっているとついついまだ十分色付いていないものまで収穫してしまいます。時には面倒なので知らないふりをして、青いものまで取る人もいますし、ハサミを使わずに乱暴にもぎ取る人がいますので監視の見回りは欠かせません。
収穫チームは、各自お弁当持参で、適当な時間に休憩に入り食事を取ります。賃金は収穫量で支払われるので、さっさとサンドイッチを食べて仕事に戻る人が殆どです。収穫は気候条件に左右されるので、30人で一日1トン以上収穫できる事もあれば600kgの時もあります。また今年のように収穫シーズンがずれ込んだ場合、良い実だけを選別しながら収穫するので収穫量がのびません。今年はオーナーに取っても収穫部隊にとっても我慢の年です。

収穫したオレンジの箱はチームごとに道路に積み上げます。収穫終了後トラックに積み込み、箱を数えて納品書を書きます。この納品書にはオーガニック認証の氏名・番号と畑の区画番号・トラックのナンバー、納品先等を明記しなければなりません。これにより、オレンジが何時・誰の畑の何処で収穫されたかが分かるようになっているのです。いわゆるトレーサビリティを確保するために細かな作業が要求されるわけです。
収穫されたオレンジは倉庫に運ばれます。そこで受注の内容によりいろいろなパッケージが施されます。納品はネットに入れたのもから、4個入りの小さなパック、量り売り用の10kg入りの箱詰めまで様々です。ベルトコンベアーに乗せられたオレンジは最初の選別を経て水洗い・乾燥され第二の選別を受けます。次に重さと大きさで機械的な選別を受け、最後のパッキングの前に最終の選別を受けます。そしてパレットに荷造りされ、冷蔵倉庫に保存され出荷を待ちます。

収穫から出荷までは受注状況にもよります。急ぐときには同日中に出荷ということもありますが、平均的には4〜5日というところでしょうか。イギリス・ドイツ・フランス等は陸路で24時間以内に着くので収穫から1週間以内で市場に出回る計算になります。
最近は倉庫に回さずに畑でそのまま箱詰めして出荷という需要もあります。(オーガニックに限った需要です)もちろん洗浄もしなければ大きさもバラバラです。それでもそのほうがよりナチュラルだということで今後増える傾向にあるようです。ということで、今回はオレンジの収穫から出荷までの様子をかいつまんでご紹介しました。
次回は、クリスマスから新年を迎える楽しい街の様子をお伝えしようと思います。
それではまた「Hasta luego !」
2008年11月:バレンシア便り Vol.3「秋祭りの巨大パエリア」
スペインは「毎日どこかの町でお祭りがある」と言われているほど、お祭りの多い国です。私たちが住んでいるバレンシア近郊の町“ベニアルホ”では春から初夏に4回、秋に1回お祭りがあります。この他に春には火祭りや復活祭がありますので、春から初夏にかけては毎週末なにか行事があるのです。
秋のお祭りは「医者の守護聖人」「痛みの聖母マリア」「永遠の救いの聖母マリア」「聖なるキリスト」の4つお祭りが合体したものなので行事も盛りだくさんです。

秋のお祭りは仮装行列大会から始まります。子供から大人まで毎年工夫を凝らして登場します。参加者達はそこ抜けに明るく、リズムに乗って踊りまくるのがスペイン流。沿道の人には飲み物やキャンディーが振る舞われ、終点の広場ではバレンシアの夏の有名な飲み物「オルチャータ」が振る舞われます。これはバレンシア地方特産のチュファの根から作る豆乳に似た感じの飲み物です。

騒いでばかりいるようですが、お祭りは宗教的なものなので、ちゃんとミサやお祭りする聖人の像を掲げてパレードもします。この時は服装もあらためて厳粛な雰囲気になります。
これが終わると、各自夕食を持ち寄って広場で食べます。ワインやおつまみ等が配られます。ひとしきりお喋りと夕食を楽しんだあとは生バンドの演奏が始まり、ダンス大会です。流行のロックナンバーからスペイン独特の闘牛をモチーフにした「パソ・ドブレ」までが演奏されます。

お祭りのイベントで人気のあるのがCorrefocs(火の粉のパレード)です。直訳すると「走る火」なのですが、火の悪魔が花火を持って、通りを走り回ります。見物人は焼け焦げてもいいような服を着て、帽子とマスクをして火の粉の下をくぐり抜けたり、音楽隊の演奏に合わせて悪魔と腕を組んでパレードします。
Correfocsはスペインならでは危険で面白いイベントで、とても楽しいのですが、遅く始まるのが難点です。
金曜日と土曜日の生バンドの演奏は明け方5時近くまでありますので、やっと演奏が終了して眠れると思ってうとうとしていると、強烈な爆裂音で飛びおきます。目覚まし爆竹隊の登場です。パエリアを食べるグループごとに場所取りをしなければならないので眠たい目をこすって広場に集まります。こんな調子なのでお祭りの間は寝不足でフラフラになります。

土曜日は1000人分とも言われている巨大パエリアが作られます。もちろん、カタツムリ・うさぎ・鶏肉の入ったバレンシア風パエリアです。パエリアは農作業の合間に畑で作られたものなので、畑の近辺で調達できるもので作られていたそうです。日本ではパエリアと言えばシーフードですが、バレンシア風パエリアはお肉のパエリアです。

パエリアでお腹が一杯になった後はシエスタをしたいところですが、Corda d’aigua(水かけ戦争)があります。この辺りは水が豊富なので水不足に悩む他の地域の人には申し訳ないのですが、そんなことはお構いなしにやってしまうのがスペイン人です。
写真を撮っていたら私もいつの間にか水浸しになってしまいましたので、カメラを置いて参戦しました。こんなに面白いのなら来年は初めから参加しようと思いました!
この他にも毎日ミサがあり、昼間は仕掛け爆竹(?)、夜は打ち上げ花火、子ども用のイベントも幾つかあり、盛りだくさんの3日間でした。
11月に入り、例年であればマンダリンオレンジの収穫の最盛期なはずなのですが、今年は9月中旬からの長雨・大雨で収穫ができないでおります。何でも12〜13年ぶりの大雨だそうです。この辺りでは住居の浸水などの被害は出ていませんが、オレンジには被害が出ています。やはり地球温暖化の影響なのでしょうか。農家はいろいろ心配の種がつきません。
次回のバレンシア便りで、オレンジの豊作の様子をお届けしたいところですが、晴天続きを期待しましょう。それではまた「Hasta luego !」
2008年10月:バレンシア便り Vol.2「オレンジ農園の夏」

バレンシアは典型的な地中海性気候です。春・秋・冬には雨が降ることもありますが、夏は暑く、とても乾燥しています。
年間の晴天日は300日以上と聞いたことがありますが、この辺りでは、雨や曇りの日は本当に珍しいです。ちなみに夏の真っ盛りとなる7月から8月にかけては、日中の気温が40度近くにもなり、畑の作業は早朝にしかできません。夕方は6時を過ぎてもまだまだ暑いので午後の作業をする時は午後7時以降、9時半までという事もあります。
夏の主な仕事は害虫駆除と草刈と水出しですが、まずは害虫駆除のお話から。
オレンジの害虫は木に生息する小さなクモ、実に卵を産みつけるピヨホと呼ばれる小さな虫、地中海ミバエなどがあります。クモは目に見えないほど小さく、主に木全体に生息し、木や葉の樹液を吸いとるという害があります。ピヨホは葉や実の表面に卵を産みつけます。オレンジの実に害はないのですが、表面をカサブタのように覆うので、見た目が悪くなり、商品価値がなくなります。地中海ミバエは実の中に卵を産みつけるので、実が腐ってしまいます。
この三大害虫のうち、クモとピヨホはサマー・オイルと呼ばれているオイルと水を混ぜた液体を木全体(幹・葉・実)に噴霧し、表面に薄いオイルの膜を作り、卵が孵らないようにします。サマー・オイルには殺傷能力はないので、親のクモやピヨホは駆除できませんが、増殖を防ぐことができます。地中海ミバエの駆除には、ハエ取り用のワナを一定の間隔で枝に吊るします。これは家族総出で(と言っても3人ですが)取り付けて行きます。 これらの方法はすべてヨーロッパのオーガニック基準で認められたものです。
夏の暑い時期の草刈は本当に大変です。雑草にも畑の湿度を守り、共存が可能なものもありますが、土の栄養分や水分を吸い取ったり、木や実の成長に害があったり、収穫の妨げになるものは駆除しなければなりません。ベルトメウ農園は昔からのオレンジ畑ですので、木と木の間隔が狭く、小型のトラクターでも入れないところが多く昔ながらのカマで地道に時間をかけて刈り取るしかないのです。

水だしは、明るい時に4時間くらいなら楽しい仕事です。作業は「洪水方式」とか「絨毯方式」と呼ばれていて、文字通り、畑を水浸しにします。乾いた土に水が吸い込まれてゆくときに面白い音がしたり、いろいろな鳥たちが行水に来てとてもにぎやかです。でも、畝が壊れた所を鍬で直したり、雑草を引き抜いたりしていると楽しいどころではなく、重労働になります。しかも、水は自分たちの都合のよい時間にもらえるわけではなく、水源の管理人さんの都合の悪い時間(夜、休日、お祭り、サッカーの大事な試合がある時)に回ってきます。

この他に、この時期「家族の仕事」として、マンダリンオレンジの間引き作業があります。これはすべての品種に必要なわけではありません。日本の農家の方ならきっと全部の品種をするのだろうと思いますが、バレンシアでは「成りっぱなし」が基本です。ただ、マンダリンオレンジは実がブドウのように密集してしまうものがあるので、それだけは、間引きが必要になります。この品種はわが農園の収穫高の5%程度なので、私と娘でおしゃべりしながらやっています。

先日、この間引き作業をしていたら、葉っぱに包まってお昼寝をしていた「こうもり」を発見しました。小さかったのでまだ子供だったのかもしれません。こうもりを間近で見たのは初めて。写真を撮るとビックリして飛んでゆきました。わが農園には野鳥・渡り鳥を始め、イノシシ、ハリネズミ、のうさぎ、きつね、アライグマ風の正体不明動物など沢山の動物が住んでいますが、写真に撮れるのはとても珍しいケースなのです。
ということで「夏のオレンジ農園」のお仕事をかいつまんでご紹介しました。
それではまた「Hasta luego !」
2008年9月:バレンシア便り Vol.1「私たちが作っています」

まずは自己紹介から。
農園主はザビエル・ベルトメウ・ブライ。スペインのバレンシア工科大学の建築学部を卒業後、北海道大学初代の国費留学生として招致され、約10年ほど日本に在住していました。建築・土木分野でスペインと日本の両方で博士号も取得したという、農業とは程遠い経歴を持っています。
スペイン帰国後に大学の研究室に戻ることも考えましたが、最終的にオーガニックによるオレンジづくりの道を選びました。一見、畑違いのような選択ですが、もともと19世紀からつづくオレンジづくりのファミリーに生まれ、子供のころからオレンジ栽培に親しんでいましたので、彼にはそんなに違和感のない決断でした。

そしてこの「バレンシア便り」をお届けするのは、農園の女主人(セニョーラ)、ベルトメウ・ブライ片山瑛理子と申します。ザビエルとは札幌で知り合いました。スペインに移住前は税理士をしており、冷房のあるオフィスから灼熱のオレンジ畑へと転職しました。
自然と動物が大好きな二人は「人間と自然の共生」をコンセプトにオレンジのオーガニック栽培に取り組んでいます。
バレンシアのオレンジの美味しさには今でも驚いてしまいます。こんなに美味しいバレンシア産のオレンジなので、日本の家族や友人知人にも味わってもらいたいと思いますが、日本へ輸出するのはハードルが高すぎて未だに実現できません。「生が無理であればマーマレードで」と考えたことが現在の「ベルトメウ・オーガニック」というブランドの誕生につながった次第です。
と簡単ですが「はじめまして」のご挨拶とさせていただきます。
それでは、次回からはオレンジづくりやスペインの話題をお届けします。読んで楽しいお便りになれば幸いです。それではまた「Hasta luego !」